1.の補足
この異常に硬結した筋の表面に鍼が当たったときの感覚は、骨面に当たったと
きとほとんど区別が付きません。そのため、通常は、鍼が骨面に当たったと誤
解するはずです。
逆に、骨面に当たっているのに、それを硬結した筋の表面と勘違いすることも
あります。
「骨面近くの深いところに出来る」というのは、もう少し厳密に書くと、筋と
骨の付着部に出来ると言うことです。その意味では、「筋・腱の付着部症」
に書かれている次の記述、
----------------------------------------------------------------------
その病理は主として、非石灰化線維軟骨層での亀裂.縦断列.微少外傷とその
修復像が初期病変と考えられている。この外傷と修復のバランスが崩れること
で症状が生じ、その後、肉芽形成.石灰化.骨化と器質的変化が進行する。
----------------------------------------------------------------------
と合致します。この「石灰化.骨化」した部位を直接、鍼で崩すようにしてほ
ぐします。これを平方辰夫氏は「岩くずし」といい、小山曲泉氏は「掃骨」と
言い、小川義裕氏は「Et鍼」と言ったのだと解釈しています。
ただし、この変性は、患者の体型・体格・骨格・年齢・職業・運動歴などなど、
多様な要因によって、筋の骨への付着部、またその近傍ならば、あらゆる場所
に形成される可能性があります。
ベースギタリストの左手の指から、立ちづめの仕事を超年月続けている人の足
底まで、骨への付着部ならば、あらゆる筋肉に形成されますが、その生成機序
は、部位の別なく、上記引用文と同じであると考えています。
骨化の生成速度は、腰椎付近で、0.5mm/年、頸椎および肩胛骨烏口突起付近で
0.2mm/年のように感じております。その周囲には、石灰化組織・肉が組織が層
状に取り巻いており、さらに周辺の筋から皮膚までを力学的・神経学的に緊張
させていると考えております。
「岩くずし」「掃骨」「Et鍼」、その名称はいずれでも良いのですが、この組
織を切り崩せるのは鍼しかなく、ここにこそ、最小限の侵襲で、深部の治療が
出来る「鍼」(毫鍼)の最大の出番があると考えています。
戻 る